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構造不況の造船 海洋資源に走る!

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日の丸造船、石油・ガス開発の洋上設備に活路求める

「三井海洋開発の成長を全面的にサポートし、海洋資源分野をもっと伸ばしていく」──。川崎重工業との経営統合が、重機・造船業界の大型再編として話題となりながらも破談に終わった三井造船。新たな生き残り策を迫られる中、6月に就任した田中孝雄社長は、子会社の三井海洋開発を通じたFPSO(浮体式の原油生産・貯蔵・積み出し設備)事業の拡大を急ぐ。

FPSOは、全長300メートルの巨大タンカーに大型プラントを搭載した洋上設備。海底から原油をくみ出し、不純物を取り除いた後に船体内のタンクで一時貯蔵する。三井海洋はそのFPSOを専門とする設計・エンジニアリングの世界大手だ。自社で設計、機材調達を手掛け、シンガポールなどの造船所を下請けとして設備を建造する。

三井海洋はブラジルの国営石油会社、ペトロブラスなどから、1基で1000億円を超す大型FPSOを相次ぎ受注。赤字寸前の本体造船事業とは対照的に、今2013年12月期の売上高は2200億円、最終利益は65億円といずれも過去最高を更新する見込みだ。川重の前社長らが三井造船との経営統合を画策したのも、成長が続く三井海洋の獲得が大きな狙いの一つだった。

「FPSOの需要は今後も増えていく。マンパワーを増やせば、もっと事業規模を拡大できる」と三井造船の田中社長。現在のところ、三井海洋はエンジニアなどの人数的な制約から、年間2基の新規受注に対応するのが精いっぱい。三井造船からの人員派遣に加え、本体陸上プラント部隊が装置の一部設計を引き受けるなど支援を強化し、早期に3基まで対応できる体制を整える。

すでに商船と並んだ 洋上設備の市場規模

鉄鉱石や穀物を運ぶバラ積み船など、輸送用の商船を主としてきた日本の造船業は今、窮地に立たされている。中国経済の高成長で2000年代半ばから続いた海運・造船バブルが終焉し、船価は暴落、新船需要も細っている。しかも、韓国に続いて、近年は中国造船所の台頭が著しい。「伝統的な商船はライバルが増え、構造的に競争環境が厳しくなった。明確な将来像はなかなか描きづらい」(三井造船の田中社長)。

一方、同じ“海”を舞台とする成長市場として注目されているのが、海洋資源分野だ。原油高騰と陸上既存油田の枯渇を背景として、世界的に海洋での原油・天然ガス開発が相次ぎ、掘削設備やFPSO、オフショア(沖合い)作業支援船といった海洋資源開発向けの洋上設備・特殊船舶の需要が高まっている。

海洋資源分野は特殊な装置・機器類を搭載して工事も大掛かりになる分、1基(隻)当たりの金額が大きい。一般商船がせいぜい1隻・数十億円なのに対し、大型ドリルシップ(掘削船)は500億円を下らない。こうした海洋資源開発向け洋上設備の市場規模は、直近で年間4兆~5兆円。バブル終焉でしぼんだ商船の新規発注額とすでに肩を並べており、20年までに10兆円市場への成長が予想されている。

その最大の建造国は韓国で、建造実績、手持ち工場量とも群を抜く。かつては日本も建造上位国だった。オイルショックで造船不況に見舞われた1970年代、国内造船所は操業対策で掘削リグに相次ぎ進出、ピーク時の81~82年には年間建造が10基を超えた。しかし、標準設計の商船と違って仕様変更が頻繁で採算管理が難しく、多額の赤字工事が続出。当時は需要も一時的なもので終わり、80年代後半に各社は事業から撤退した経緯がある。

00年代に入って原油価格が高騰すると、石油会社による海洋開発が活発化し、開発・生産に用いる洋上設備への投資も急増。韓国の造船大手3社(現代重工業、サムスン重工業、大宇造船海洋)は海洋資源分野を戦略事業と位置づけ、巨大な専用ヤードまで新設して新たな柱に育てたが、日本の造船所は完全に取り残されていた。

そして今、伝統的な造船事業が苦境に立たされる中、国内造船大手も成長市場の海洋資源分野に活路を見いだそうと動き始めている。冒頭の三井造船との経営統合交渉を白紙撤回した川重にしても、海洋資源分野は造船事業生き残りに向けた重要キーワードだ。

川重はブラジルへ進出現地合弁で掘削船建造

日本の真裏に当たるブラジルの北東、バイーア州マラゴジッペ臨海部で、1000億円を投じて大型造船所の建設工事が進められている。事業主はエスタレーロ エンセアーダド パラグワス社(EEP社)。海洋資源開発向け洋上設備の建造を目的として、地元大手ゼネコン3社が設立した新興造船会社だ。昨年、このEEP社へ川重が30%出資して経営に参画、14年度末の造船所完成後、共同事業として現地でドリルシップなどを建造する。

ブラジルは現在、海洋資源開発において世界で最も“熱い”地域だ。00年代半ばにリオデジャネイロ沖合い250キロメートル、水深6000メートル以上の超深海部で巨大油田が発見され、国家プロジェクトとして大規模な開発が進んでいる。その実行部隊であるペトロブラスは今後5年間で23兆円もの莫大な投資を計画。試掘、開発、生産とプロジェクトが目白押しで、必要となるドリルシップやFPSO、オフショア支援船は膨大な数に上る。

ブラジル政府はこうした洋上設備の産業を自国内で育成する政策をとり、国内企業へ優先的に発注している。実際、EEP社はすでにペトロブラスから6隻ものドリルシップを受注。FPSOに使用する中古タンカーの船体改造工事も複数受注しており、現時点で受注済み工事高は5000億円を超す。ただ、ブラジルはまだ造船産業が未熟で、ドリルシップに必要な肝心の船体建造技術がない。そこで川重の出番だ。

「どういう形で海洋資源分野に出ていくか考えていたときに、技術支援と出資の話を頂いた」と話すのは、川重の船舶海洋カンパニーを率いる村上彰男常務。「ブラジルには巨大な市場があるが、自国産業優先なので、日本で造って輸出するやり方では難しい。現地企業と一緒にEEP社を大きく育てて、配当などの形で果実を得たい」。ドリルシップ建造から始め、FPSOや作業支援船などにも領域を広げる構想を描く。

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FLNG向けタンクの事業化を狙うIHI

三井造船や川重だけではない。総合重機の最大手、三菱重工業は今年4月、ノルウェーの資源探査会社から最新鋭の探査船2隻を受注した。同社は中国勢との競合が激しい一般商船から撤退し、技術参入障壁が高い資源探査船をLNG(液化天然ガス)運搬船や大型客船と並ぶ重点船種と位置づける。

IHIでは、海洋資源関連で二つのプロジェクトが動いている。同社は今年6月、グループのジャパン マリンユナイテッド(JFEとの造船事業統合会社)などと共同で、ブラジル北東部ペルナンブコ州のアトランチコスル造船所に出資した。同造船所はペトロブラスから大量の石油タンカー、ドリルシップを受注しており、IHIも川重と同様に現地造船所への出資を通じて、ブラジルでの造船海洋事業に乗り出す。

IHIが進めるもう一つのプロジェクトは、FLNG(浮体式の天然ガス洋上液化設備)用タンクの事業化だ。FLNGは、海底から取り出した天然ガスを洋上でマイナス162度まで冷やして液体状のLNGに変え、船体内タンクで一時貯蔵する最先端の洋上設備。現時点でまだ稼働している実物はないが、2件発注済みで、豪州や東南アジアを中心に複数の導入計画がある。

FLNGは洋上で操業するうえ、貯蔵LNG量も変動してタンク内の状態が不安定なため、タンクの損傷リスクが高い。IHIは頑丈さが売りの独自SPBタンク技術を持つ。コストが高くLNG運搬船用では他社に採用されなかったが、「使用条件がより過酷なFLNGなら十分、商機がある」(海洋・鉄構事業担当の安部昭則・執行役員)と見る。製造を担当する愛知事業所は早くもFLNG用タンクを将来の柱に位置づけ、専用のアルミ自動溶接ラインを導入して初の受注を待っている。

国も造船各社の海洋資源分野進出を支援しようと動いている。国土交通省をはじめ、日本政府はブラジル政府に対して、日本の造船大手が共同で研究・開発を進めている洋上中継基地(沖合い作業現場に人員や機材を運ぶ中継基地となる巨大な浮体構造物)の導入を提案。今年5月には茂木敏充・経産相、9月には岸田文雄・外相がブラジルを訪問し、担当大臣らに売り込みを図った。

洋上基地の受注で連合日本政府も後押し

日本政府の強い働きかけが功を奏し、ペトロブラスは洋上中継基地の導入を計画。14年に行われる入札には、日本の造船大手が連合を組んで応札する。国交省海事局海洋開発戦略室の鈴木長之・課長補佐は言う。「大きな市場のある地域で早く実績を作り、現地の石油会社から信頼を得ることが何より重要だ」。今回の洋上中継基地の売り込みは、そのチャンスを国内勢に与えるための働きかけだ。

造船事業の新たな収益源を求めて、海洋資源分野へと走る国内造船大手の面々。はるか先を行く韓国勢のみならず、伝統的な造船で日本を脅かす存在となった中国勢も続々と参戦し始めている。そうした厳しい競争環境の下で、海洋資源分野を新たな収益源として確立できるかどうか──。その成否は国内造船大手各社の生き残りに直結する。

http://toyokeizai.net/articles/-/21230



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ブログパーツ [ 2013年10月17日 10:36 ] カテゴリ:日本ビジネス | TB(0) | CM(0)
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